本記事では加湿機能付きのエアコンが気になっている人に向けて、メリット・デメリットを徹底的に解説します。
加湿機能付きエアコンは2社のみ販売しています。1社目はダイキン工業で世界で初めて無給水加湿のエアコンを開発し、20年以上の歴史があります。もう1社はパナソニックで2021年より販売を開始しています。
製品名称はダイキン工業「うるさら」、パナソニックLXシリーズです。
早速ですが、加湿機能付きエアコンのメリット・デメリットをお伝えします。
メリット | デメリット |
---|---|
加湿器の場所を取らない 給水作業が不要 | 加湿用ヒーターは電気代がかかる 加湿量が安定しない エアコンの音がうるさくなる |

管理人:おすけぞー
- 建築設備機器の専門商社勤務(2007年~)
- 2級管工事施工管理技士
- 専門分野
空調機器:ダイキン工業
ダイキン製品の販売からサービス・改装・技術的な問い合わせに対応。
家庭用エアコン・業務用エアコン・エコキュート・セントラル空調製品までダイキン製品を取扱しています。
メリット・デメリット
メリットは先に書いたように、加湿器の設置場所が不要であること、外の水分を吸着して加湿に利用するため給水作業が不要であることの2点です。メリットは分かりやすいですね!
ではデメリットを詳しく解説していきます。
デメリットその1:電気代がかかる
オムツのような吸着材で外の水分を吸着し、加熱することで水分を蒸発させてファンで室内に水分を送るのが基本的な仕組みです。


家電量販店の販売員はもちろん、私の同僚でも加湿用ヒーターのことを知らない人がいます。加湿をするのは冬ですが、カタログに記載してある暖房運転の消費電力とは別に、加湿用ヒーターの電力が必要になります。必要になる電力量は下記の表の通りです。
加湿ヒーターの消費電力
能力 | ダイキン | パナソニック |
---|---|---|
6畳用 | 900W/h | 810W/h |
8畳用 | 910W/h | 860W/h |
10畳用 | 910W/h | 860W/h |
12畳用 | 920W/h | 860W/h |
14畳用(100v) | 920W/h | – |
14畳用(200v) | 1,580W/h | 1,340W/h |
18畳用 | 1,580W/h | 1,340W/h |
20畳用 | 1,580W/h | 1,340W/h |
23畳用 | 1,580W/h | 1,340W/h |
26畳用 | 1,580W/h | 1,340W/h |
29畳用 | 1,700W/h | 1,340W/h |

家庭用ドライヤーの消費電力が600~1200W/hです。
6畳用エアコンの定格消費電力は440W/h、20畳用エアコンの定格消費電力が1,550W/hなので、加湿用ヒーターに必要な電力の大きさが分かると思います。
常に加湿用ヒーターがONになっているかは技術資料を見ても確認できませんが、加湿機能を使う場合はもう1台エアコンを動かしているくらいには電力を消費します。
デメリットその2:加湿量が安定しない
カタログに記載してある加湿量は加湿しやすい環境が整っている状態での加湿量になります。
- 空気条件が現実的ではない
- 風量設定が最大風量の「5」の場合であり、実際の使用方法とは離れている
- 配管長が4mでの計算(配管が長くなると加湿能力ダウン)
カタログには外気温度7℃DB、6℃WBという条件がありますが、カタログ記載の空気条件は加湿能力が出やすくなる有利な値です。実際の気象条件とは離れているため、カタログ値の加湿能力は発揮できません。
東京の過去の気象情報で加湿量を計算すると、カタログ値との乖離は下図のようになります。


風量設定や配管長を考慮すると、加湿能力はさらにダウンします。



カタログ値より加湿能力は大幅に下がりますが、必要加湿量は維持できることもあります。
もっと詳しく知りたい方は下記記事も参考にしてください。
デメリットその3:運転音がうるさい
運転音については実際に使用した人しか分からないと思いますが、結構うるさいです。
最近のモデルになって消音マフラーが内蔵されるようになりましたので、メーカーも認識していたと思います。
室外機で吸着した水分をヒーターで蒸発させて室内に送るため、室外機に送風ファンが付いているのですが、その音がうるさいのかもしれません。
うるさらminiが気になる人へ
うるさらminiはおすすめしません。おすすめしない理由は下記記事を参考にしてください。
一言でいえば、加湿運転が止まるからです!
ダイキンRX(うるさら) VS パナソニックLX
ダイキンRXシリーズ(うるさら)、パナソニックLXシリーズは両社の最高級モデルであり、加湿機能・換気機能を持ったエアコンです。
販売価格
2024年12月24日時点の販売価格になります。
能力 | ダイキン | パナソニック |
---|---|---|
6畳用 | 122,400 | 242,400 |
8畳用 | 132,800 | 252,000 |
10畳用 | 135,800 | 255,600 |
12畳用 | 153,800 | 262,700 |
14畳用 | 156,400 | 272,100 |
18畳用 | 174,600 | 299,700 |
20畳用 | 190,200 | 277,700 |
23畳用 | 218,000 | 337,800 |
26畳用 | 241,800 | 361,200 |
29畳用 | 279,800 | 379,900 |



販売価格はダイキンの「うるさら」の方が安いですね。
パナソニックは高級家電製品の値崩れを防ぐために指定価格制度を採用しています。
パナソニックのエオリアLXシリーズはメーカー指定価格での販売になります。
値崩れを防ぐためにメーカーが販売価格を決めていますが、在庫はメーカーに返品できるという制度です。
加湿量の比較
ダイキンRX(うるさら)・パナソニックLXの目玉である加湿機能!
各社加湿量
能力 | ダイキン | パナソニック |
---|---|---|
2.2kW | 600ml/h | 560ml/h |
2.5kW | 620ml/h | 610ml/h |
2.8kW | 620ml/h | 610ml/h |
3.6kW | 630ml/h | 610ml/h |
4.0kW(100v) | 630ml/h | – |
4.0kW(200v) | 950ml/h | 860ml/h |
5.6kW | 950ml/h | 860ml/h |
6.3kW | 950ml/h | 860ml/h |
7.1kW | 950ml/h | 860ml/h |
8.0kW | 950ml/h | 860ml/h |
9.0kW | 1,030ml/h | 860ml/h |
電気代の比較



加湿量はダイキンの方が性能が高いですね。
電気代も気になるかと思いますので、どちらのエアコンがより省エネか比較していきます。
通年エネルギー消費効率(APF)
数値が高い方が省エネに優れています。
能力 | ダイキン | パナソニック |
---|---|---|
6畳用 | 7.0 | 7.0 |
8畳用 | 6.9 | 7.0 |
10畳用 | 6.8 | 7.1 |
12畳用 | 6.6 | 6.6 |
14畳用(100v) | 6.3 | – |
14畳用(200v) | 7.1 | 7.1 |
18畳用 | 6.4 | 6.4 |
20畳用 | 6.2 | 6.2 |
23畳用 | 5.9 | 5.8 |
26畳用 | 5.7 | 5.5 |
29畳用 | 5.2 | 5.1 |
冷暖房時の消費電力は似たようなレベルです。
「うるさら」を検討する方はもちろん、販売のプロでも見落としがちなのが加湿用ヒーターの消費電力です。他のエアコンと電気代を比較する際にAPFや定格消費電力は見るのですが、ヒーターの消費電力を考慮しない方が多いです。
無給水加湿器機能を使用しなければそれで良いのですが、加湿器を使う場合は吸着した水分を蒸発させるためにヒーターを使用しますが、ヒーターの消費電力が大きいです。
加湿用ヒーター消費電力
能力 | ダイキン | パナソニック |
---|---|---|
6畳用 | 900W/h | 810W/h |
8畳用 | 910W/h | 860W/h |
10畳用 | 910W/h | 860W/h |
12畳用 | 920W/h | 860W/h |
14畳用(100v) | 920W/h | – |
14畳用(200v) | 1,580W/h | 1,340W/h |
18畳用 | 1,580W/h | 1,340W/h |
20畳用 | 1,580W/h | 1,340W/h |
23畳用 | 1,580W/h | 1,340W/h |
26畳用 | 1,580W/h | 1,340W/h |
29畳用 | 1,700W/h | 1,340W/h |



ダイキンの方が加湿能力は高いですが、ヒーターの消費電力も大きいため、加湿運転時の電気代は高くなる可能性があります。
一般家庭で使用するドライヤーが700~1,200Wなので、加湿運転をするのはエアコンと同時にドライヤーも使っているのと同じです。
清潔機能の比較
清潔機能はエアコン本体を清潔に保つ機能だけではなく、室内空気をきれいにする機能も含めて比較していきます。
ダイキン | パナソニック |
---|---|
給排気換気 | 給排気換気 |
ストリーマ | ナノイー |
フィルター自動お掃除 | フィルターお掃除ロボット |
抗ウイルスフィルター | 抗ウイルスエアフィルター |
防カビ加工ファン | 防汚・防カビコーティングファン |
セルフウォッシュ熱交換器 | ホコリレスコーティング熱交換器 |
水内部クリーン | ナノイーX内部クリーン |
機能名称は異なりますが、機能は似たような感じです。
ダイキン「うるさら」、パナソニック「LXシリーズ」は高級モデルで、清潔機能はどちらも優れています。
冷房・暖房・除湿性能
ダイキン、パナソニックともに冷暖房の立ち上げの速さは高性能で大きな違いはありませんが、除湿はダイキンが優れていて、暖房はパナソニックが優れています。
ダイキンの除湿が優れている理由
ダイキン「うるさら」の除湿は再熱除湿のため、除湿運転をしても寒くなりにくいですが、パナソニックの除湿は基本的には冷房除湿です。再熱除湿はいったん空気を冷やして除湿し、冷えた空気を暖めるので寒く感じにくいですが、冷房除湿は室温も下がってしまい寒く感じます。再熱除湿にも欠点があり、少し電気代が高くなってしまうことです。





梅雨時期の湿度が嫌いで、除湿運転を使うけど寒く感じるという人にはダイキンの「さらら除湿(リニアハイブリッド)」という除湿機能はおすすめです。
とくに高断熱・高気密住宅に住んでいる方は外部から熱が入ってこないので、弱冷房除湿では寒くなってしまいます。
パナソニックの暖房が優れている理由
パナソニックの暖房が優れている理由はエネチャージによるノンストップ暖房です。


圧縮機を運転させるために電気を使うと発熱します。どのメーカーも発熱した熱を暖房には利用していますが、パナソニックは熱を貯めてデフロスト(霜とり)運転に利用しています。
暖房運転を続けていると室外機の熱交換器が冷えて霜がつきますが、そのままにしておくと能力が出ないだけではなく、氷となって室外機が壊れてしまいます。そのため、暖房運転を停止させ冷房運転のようなことをして、室内から熱をもらって室外機の霜を溶かしています。
パナソニックは霜取り運転の熱を室内からではなく、室外機に貯めた熱を使うことで、暖房運転を停止させることが少なくなります。
気流制御
エアコンの風はエアコンの不快要素の1つで各メーカーは気流制御にも力を入れています。直接風が当たらないようにする工夫がされています。
冷気は下に、暖気は上に溜まるのでサーキュレーション気流で空気を循環させています。
ダイキン
ダイキンの気流は垂直気流がポイントです。夏は天井に沿って気流を、冬は足元から暖まるように真下に気流をお届けします。そうすることで冷気・暖気溜まりを解消し、風を直接人に当たりにくいようにしています。




左右方向への気流はワイド・左寄り・右寄り・正面・スイング・自動です。


パナソニック
パナソニックもダイキンと同様に、人に直接風が当たらないように、冷房時は天井面に冷気いくようにしています。


暖房も暖気を攪拌させるサーキュレーションモード、足元を温めるように下に吹くモードがあります。


左右への気流はダイキンより幅が広い感じです。





ダイキンもパナソニックも冷気・暖気を攪拌させるサーキュレーション気流があります。
冷房時は天井面から、暖房時は足元を暖めてくれるので、どちらも優れた気流制御ができます。
基本仕様
普段使いでは気になることがない、エアコンの基本的な性能を比較します。
ダイキン | パナソニック |
---|---|
外気50℃対応(冷房時) | 外気50℃対応(冷房時) |
低外気暖房-25℃ | 低外気暖房-25℃ |
無線LAN内蔵 | 無線LAN内蔵 |
標準品では非対応 | 室外機塩害仕様 |
吸音マフラー | 静音マフラー |
AI快適自動運転 | AI快適おまかせ |



ダイキンもパナソニックも同等の機能を備えていますが、大きな違いは室外機の耐塩害仕様です。
塩害仕様は海に近い人にとっては必須ですが、海まで1km以上ある人にとっては不要になります。温泉街や排気ガスなど大気汚染がひどい場所に室外機を置く場合も耐久性が上がる可能性もあります。
どっちがおすすめ?



ダイキンとパナソニックの比較を〇×でまとめました。
同等は両社〇とします。
ダイキン | パナソニック | |
---|---|---|
価格 | 〇 | × |
加湿量 | 〇 | × |
電気代 | × | 〇 |
清潔機能 | 〇 | 〇 |
冷房 | 〇 | 〇 |
暖房 | × | 〇 |
除湿 | 〇 | × |
気流 | 〇 | 〇 |
基本性能 | 〇 | 〇 |
塩害仕様 | × | 〇 |



ダイキンRXの方が加湿能力が高く、価格差も大きいのでダイキンをおすすめします。

