エアコンの節電方法を調べるとたくさん出てきます。
本当に効果があるのか?
なぜ節電になるのか?
技術的な視点から考えていきたいと思います。
今回もダイキン製品で見ていきます。
機器効率を上げて節電になる方法と運用方法で節電する方法の二つになります。
本記事の内容
- 省エネ製品の確認方法 COPとAFPについて
- サーキュレーターを併用して室内の空気を循環させる
- 設定温度を1℃変更する(冷房:1度上げる 暖房:1度下げる)
- 室外機まわりの環境をよくする
- フィルターや室外機を清掃する
- こまめにオン・オフしない
- 新品のエアコンに買い替える(どの程度節電になるか)
- まとめ エアコンを運用で節電する
省エネ確認方法 COPとAFPについて
昔はCOP表示のみでしたが、実際の使用環境に適さないということで2006年よりAPFも追加表示されることになりました。
今ではAPF表示が主になっています。
計算式は以下の通りです。
COP:定格能力(kW)÷定格消費電力(kW)
AFP:1年間で必要な冷暖房能力の総和÷期間消費電力量
分かりにくいので自動車に置き換えて考えてみたいと思います。
COPとは
時速80kmで1時間走ったときのガソリン消費量
APFとは
時速20kmで10分、40kmで10分、60kmで10分、80kmで10分、100kmで10分、120kmで10分走らせた時のガソリン消費量
より使用環境に近い条件でエアコンの省エネ性を評価した指標がAPFです。
実際にCOPはAメーカーの方が良いけど、APFはBメーカー製品の方が良いなどあります。
定格消費電力だけを比較して省エネ性を決めるのは絶対にやめましょう。
サーキュレーターを併用して室内の空気を循環させる
サーキュレーターを使うことで部屋の空気を循環させることで、冷暖房の効率が上がると言われます。
冷房時にサーキュレーターで空気を循環させるとエアコンが動く時間が短くなり、暖房時は逆に長くなるからです。
空調をしていると冷気は下に暖気は上にこもります。
そこでエアコンはリモコン設定温度になるように室温補正をしています。
室内設定 | 補正値 |
---|---|
冷房 | 1℃ |
暖房 | 2℃ |
除湿/ドライ | 1℃ |
冷房時、天井域(室内ユニット周辺)温度は居住域より高いため、天井域がリモコン設定温度まで下がるころには、居住域の温度は下がりすぎてしまう。
暖房時はさらに温度差がつきやすいため、天井域は短時間で設定温度まで到達するが、居住域はリモコン設定温度まで到達しにくいです。
そこで補正をかけて修正をしています。
冷房26℃設定の場合、室内機温度センサーで27℃なら居住域は26℃になったと判断しています。
暖房24℃設定の場合、室内機温度センサーで26℃になってようやく居住域は24℃になったと判断しています。
空気が循環されることで、足元の冷気のこもりを防ぎ温度むらが減り、体感温度が改善されることで部屋の快適性は上がります。
設定温度を1℃(夏は高く、冬は低く)設定しても快適に過ごしやすくなります。
サーキュレーターを使用することで温度むらを減らし、体感温度が改善されることで、設定温度を節電設定にできる。
サーキュレーターが直接の節電になるわけではなく、夏場なら設定温度を上げて節電するということですね。
サーキュレーターの電気代より、エアコンの温度を1℃高くした方が節電効果があるかどうかは、家の断熱性能、お使いのエアコンとサーキュレーター次第です。
余談
サーキュレーターの替わりに空気清浄機でも空気を循環させることができます(6畳程度の部屋)
また、高機能エアコンは気流制御により冷気は天井方向に、暖気は足元に向けて風を送る機能があります。
エアコンの設置位置と家具などの配置を考え、風の流れを妨げないような部屋であれば、サーキュレーターなしでも温度むらを減らして快適な空間にすることが可能です。
設定温度を1℃変更する
エアコンは室外機・室内機間を配管接続し、冷媒を循環させて熱を放出・吸収しています。
冷房時で考えます。
35℃の部屋を28℃にするのに7℃分、26℃にするには9℃分の熱量を奪う仕事量が必要になります。
運転開始直後は設定温度が高い方が節電になるのはわかります。
一定時間経過して室温が安定してきた場合はいかがでしょうか?
部屋の構造は全く同じ条件なので、いったん冷えてしまえば、あとは入ってきた熱量を処理するだけなので一緒ではないでしょうか。
温度1℃変えると12%程度の節電効果があると言われています。なぜでしょうか。
もちろん入ってくる熱量が違うから節電になるのですね。
窓のサッシ、ガラス、壁、屋根などから熱が侵入してくるのですが、室外と室内の温度差が大きいほど入ってくる熱量も大きくなります。
だから設定温度が高い方が室内外の温度差が小さくなり節電になります。
室外機まわりの環境をよくする
室外機周りの環境をよくすることで節電効果が得られます。
冷房時は室内の熱を吸収して室外に放出します。
室外機では外気と熱交換をために高温の冷媒ガスが流れています。
室外機を熱から守るために写真のような日よけは効果があります。
室外機の周りに物などを置くと、室外機からの熱風が障害物にあたり、跳ね返ってきた熱い空気を再度吸うことになります。
吸込空気温度が上がってしまうため、消費電力が跳ね上がります。
余談
室外機に水をかけると省エネになると聞いたことがある人もいるかと思います。
実際、業務用エアコンには自動で室外機に水を散布する装置があります。
省エネになるのは間違いないのですが、水道水を直接かけるとカルキが熱交換器に付着します。
そうなると熱交換効率が悪くなるだけでなく、フィンが腐食します。
たまにホースを室外機の上にのせて水をかけているのを見かけませんか?
室外機の周囲温度が45℃を超えるようなときの一時しのぎ程度なら良いと思いますが、毎日は止めてください。
大きな現場では井水などをろ過した水をかけています。そうしないと逆に故障の原因となり費用がかかります。
フィルターや室外機を清掃する
エアコン内部のフィルターにゴミやほこりがついて目詰まりしてしまうと、吸い込める空気の量が少なくなって空気を冷やしたり暖めたりするのに多くの電力を必要とします。
エアコンは室内機のセンサーで室温を判断します。
部屋の温度によって圧縮機の回転数を決めます。
フィルターが目詰まりしていると熱交換器を通る空気が少なくなり、部屋の温調ができません。
電力ばかり無駄に消費してしまいます。
あまりにも目詰まりしすぎて熱交換が十分できない場合、熱交換器用のセンサーで温度異常を検知して強制的に運転停止します。
これはエアコンの保護装置で、故障するのを防ぐためです。
フィルター清掃頻度(推奨)は2週間に1回です。
写真は室外機の目詰まりです。
これはひどい汚れです。
これでも室外機は動き続けてくれます。
もちろん熱交換効率が悪くなるので消費電力はあがります。
駐車場・駐輪場の横や人がよく通る近辺にある室外機は、舞い上がったほこりや砂を吸い込みやすく汚れやすいです。
ここまでくると普通に洗ってもとれません。
内側から高圧洗浄する必要があります。
高圧洗浄中の写真です。
ごっそり汚れが落ちます。
室外機は耐久性があり、メンテナンスしないでも問題ないことが多いですが、定期的に確認だけでもしてください。
こまめにオン・オフしない
これは本当かどうか調べるためには実際に計測してみないと分かりません。
ダイキン工業が実際に30分ごとにON・OFFした場合と連続運転した場合の消費電力量を計測していますので、動画をご覧ください。
動画再生時間は2分9秒です。
結論:9:00~22:00は30分程度の外出はつけっぱなし、夜間22:00~はOFFにした方がよいそうです。
動画は18:00~23:00はこまめにOFFにした方が良いと解説していますのでご注意ください。
グラフの形状を見ると22:00頃からはOFFにした方がよいと判断できます。
余談
寒いからとエアコンをオフにして温度調整をするのは、電気代を考えるならば良くないことになります。
新品のエアコンに買い替える(どの程度節電になるか)
消費電力量期間合計(年間)kWhの差×1kW/hあたり単価25円として計算します。
比較対象機種はEシリーズになります。
2021年モデルと2010年モデルで比較してみます。
- 6畳用 →年間1,075円の節約
- 8畳用 →年間850円の節約
- 10畳用 →年間950円の節約
- 12畳用 →年間2,050円の節約
- 14畳用 →年間2,375円の節約
- 16畳用 →年間3,150円の節約
普及モデルのEシリーズと当時のNシリーズです。
2021年モデルと2006年モデルで比較してみます。
- 6畳用 →年間6,575円の節約
- 8畳用 →年間5,350円の節約
- 10畳用 →年間5,400円の節約
- 12畳用 →年間4,450円の節約
- 14畳用 →年間9,100円の節約
- 16畳用 →年間17,200円の節約
経年劣化も考えるともう少し節電にはなります。
エアコンを運用で節電する方法 まとめ
- 冷房時は設定温度を1℃上げる、暖房時は1℃下げる
- 室外機の周りの環境を改善する(温度や障害物の改善)
- フィルターを清掃する
- 室外機の汚れを清掃する
サーキュレーターは体感温度を改善することができ、結果として設定温度を省エネ設定にできる補助的な製品です。